虚構の中の真実 時代劇のヒーローたち

大岡忠相〜素顔の見えない名奉行

要するに出るものを減らして入ってくるものを増やしたってことね。

町人を活かした行財政改革

そういうこと。経済政策については他にもいろいろあるんだけど、その前に忠相が采配を振るった江戸の都市政策について触れておこう。まず代表的なのが消防組織である「町火消」の創設ね。それまで形骸化してあまり機能していなかった大名火消や武家火消の職務を民間に委託したわけ。民間に委託すれば、防災意識も高まるだろ。

火消ってお正月の「はしご乗り」なんかに今も伝統が残ってるわよね。粋でいなせで、これぞ江戸っ子っていう感じ。

当時もそういう風に見られていたから、若い娘にモテモテだったようだね。まぁ、それはさておき、火消制度のような民間の有効活用は吉宗と忠相の基本ラインだったから、忠相は町制改革にも着手する。当時、町奉行所の300人程度の人員では、爆発的に増え続ける江戸の人口に対処できない。だから幕府は町ごとに「町名主」を置いて行政の実務を代行させていたんだ。

江戸時代の方がむしろ民間委託の「小さな政府」だったのね。


「町名主」の下には「町代」がいて、細かな業務を担っていたんだけど、彼らに支給する「町入用」という予算が増える一方だし、会計に不正があることもわかったので、忠相は町名主のリストラと町代の廃止を通告、名主組合を作って相互の業務に不正がないか監視することを提案する。

やるわね〜。今の政治家にも無駄なシロアリ退治をして欲しいな。無理っぽいけど…。

町名主たちは、リストラを撤回してもらう代わりに町代の廃止と組合の創設を了承した。これで行政費用が大幅に削減できる。続いて福祉政策だ。ある日、吉宗考案の直訴受付ボックス「目安箱」に一通の訴状があった。訴状の主は町医者の小川笙船(しょうせん)。そこには、貧しいがゆえに医療を受けられず、病に冒される弱者の窮状が書かれていた。

それを読んでいる大岡さんの姿が目に浮かぶなぁ…。


それが元になって出来たのが無料の医療施設「小石川養生所」だ。そして提案者の小川笙船こそ、山本周五郎の小説『赤ひげ』のモデルであり、映画化されて黒澤明監督の代表作にもなってるから、さすがにキミも知ってるだろ?

知らない。映画も観たことないし…。


ボクは不幸せだな〜って、散歩中の若大将も嘆いていると思うよ。その他にも飢饉対策として、学者の青木昆陽を書物奉行に登用して、サツマイモの栽培を奨励している。

大岡さん、八面六臂の大活躍ね。


キミも四文字熟語ぐらいは知ってるようだな。書けるかどうかは別として…。忠相の仕事はまだまだある。他にも私娼、つまり吉原以外で春を売る女性や賭博、心中なんかを取り締まって、風紀の粛正に努めた。さて、そこで出てくるのがさっきの「白子屋お熊」だ。

それとこれと、何か関係があるの?


シロアリじゃなくて大ありですよ。吉宗の最重要スローガンは倹約と武道の奨励、つまり元禄バブル以来の贅沢はやめて、武士は武士らしく武道に励み、町人は町人の、身分相応の暮らしをせよということだ。

バブル崩壊だもんね〜。そんな中で贅沢する人もいたんだ〜。


それが白子屋の母子さ。だから金欲しさにモラルを忘れる。モラルと言えば、元禄以降、不義密通や心中が大流行。しかも、女性の方から仕掛ける方が多かったっていうんだからうらやましい、じゃなくて大問題だ。

へぇ〜、江戸時代の女性って、結構そういうことに積極的だったんだ。意外だなぁ。

だから忠相の厳しい処罰は一種の“見せしめ”とも取れる。風紀を乱す者は断固処罰するという意思表示のようなものだね。ただ、お熊が引き回される時にはその美貌を一目見ようと、大勢の見物人が集まったっていうんだから効果の程はわからないけど…。
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