虚構の中の真実 時代劇のヒーローたち

遠山金四郎(前編)〜誰も知らなかった桜吹雪

其の壱 刺青の謎

大江戸さん。このコーナーも人気が出て、ついに単独企画になりましたね。おめでとうございます。

何がおめでたいんだよ。こっちはちっともおめでたくないよ。カネにならない仕事が増えただけじゃねえか。それに何だよ、「大江戸四方山(よもやま)話」って、いかにもテキトーにつけたようなタイトルじゃねえか。

あははは。いいじゃないですか。大江戸さんにピッタリのネーミングですよ。ところで「四方山」ってどういう意味?

そっから聞いてくるのかよ。誰かの思いつきみたいなタイトルの説明をしなきゃいかんのか? まぁいいや。「よもやま」っていうのは「よもやも(四方八方・四面八面)」から来たっていうのが定説だな。だから「よもやま話」っていうのは、あっちこっちからさまざまな話題を集めてきたっていう意味だよ。

なるほど〜。それで、最初のテーマは「虚構の中の真実〜時代劇のヒーローたち」ということなんですけど、今回は誰を取り上げるんですか?

タイトルの意味も知らないクセに、いっちょまえに仕切るんじゃないよ。やっぱり初回は「遠山の金さん」だろ。「おうおうおう、この桜吹雪が、目に入らねぇか〜」ってなもんだな。

変なしゃべり方。もしかして、それって誰かのマネ?


やだねー、若いヤツは。片岡千恵蔵も知らんのか? 時代劇全盛期の大スターだよ。千恵蔵の遠山金四郎シリーズは昭和20年代後半から30年代にかけて、東映のドル箱だったんだ。映画では他にも長谷川一夫や市川雷蔵なんかも演じているけど、何と言っても千恵蔵だな。

テレビでなら見たことあるような気がする。誰が演じていたかは思い出せないけど…。

テレビでの第1号は中村梅之助だ。他にも杉良太郎、松方弘樹、高橋英樹、松平健、橋幸夫、西郷輝彦…と数え出したらきりがない。まぁ、最後に切り札を見せて一気に解決させるという展開は、水戸黄門と並ぶ偉大なるワンパターン時代劇の典型だな。

金さんは龍馬のおじいちゃん?

でも、その遠山の金さんが実在の人物だったっていう事は、蔵三さんに聞くまで信じられなかったわ。

最近はテレビの歴史ものなんかで取り上げられるようになったから、実在の人物っていうのは認知されてきたようだけど、いつ頃の時代に生きた人なのか、何をやった人なのかまで知ってる人は少ない。

江戸時代って言っても300年ぐらい続いたのよね。その中のどのへんの時代なのか、見当もつかないわ。

幕末と言ったら驚くかな? 正しくは幕末ではないが、ほぼ幕末に近い時期だ。キミの大好きな福山雅治、じゃなくて坂本龍馬。その龍馬が満19歳の年、歴史的には黒船来航の2年後に満61歳で遠山は亡くなっている。つまり、遠山は龍馬のおじいちゃんぐらいの年代ということ。今の時代なら父親といっても全然おかしくない。ということは、もうちょっと長生きしていれば、明治の日本を見ていたということだ。

えっ! 意外。明治時代の金さんなんて、ありえない…。


日本史の授業で習ったと思うけど、天保年間(1830〜1843)に老中首座・水野忠邦が行った幕政改革を天保の改革と言うだろ。この水野によって抜擢された若手のエリートこそ遠山金四郎だ。

え〜それも意外。エリートに桜吹雪の刺青なんて…。


さてと、そこが問題だ。遠山に本当に刺青があったかどうか。そして仮にあったとすればどんな理由で入れたのか…。
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